伊東 秀一

06/03 替えてはみたものの

「替えて」はみた。しかし、しっくり来ない。
少し前まではちょうどいいと感じていたのだが。
そういう方々が相当数おられるのではなかろうか。
何を「替え」たか? 「衣」である。
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5月中は真夏並みの暑さが続いていた。
私も既に半袖シャツを1週間着てみた。ちょうどいい晴れ
6月になった。朝、新聞を取りに外へ出ると、寒い。
外を歩く時も、上着を羽織っている時間が長い気がする。
そんな状態がほぼ毎日続いている。
既に夏服に替わった近所の高校生K君とMちゃんは、
制服のシャツやブラウスの上に、ブルゾンやパーカーを羽織り、
首をすくめながら自転車で登校していく。
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けさ、上田市菅平の最低気温が氷点下を記録し、全国最低となった。
「6月の氷点下」は16年ぶりだという。
衣替えとはいえ、私たち社会人はまだ上着を持ち歩けるからいいが、
制服の上着なしの中高生は、さぞ不便な思いをしているだろう。
南洋上のエルニーニョが姿を消し、夏の天候見通しが怪しくなってきた。
寒くなるのか、暑くのか。はてさて・・・・・・。

06/02 2度目の夏、最後の夏

「雨風は凌げるんですがね、冬はけっこう底冷えするんです」
仮設住宅に暮らして1年半になろうとするTさんは、窓外の空を見上げた。
その表情には、半年前には見られなかった笑顔があった。
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白馬村飯森の仮設住宅。1年半前の神城断層地震で被災した人たちが今も暮らす。
いまだ帰る家のない人は、白馬村だけで16世帯49人にのぼる(5/20現在)。
仮設の入居期限は2年。今年の暮れにはここを離れなくてはならない。
Tさんは、最も被害が大きかった堀之内地区の住民。
地震の翌月に仮設に入りつつ、自力で我が家を再建しようと奔走してきた。
その自宅の棟上げが終わり、来月(7月)には入居できるという。
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地震1年にあたる去年11月に訪ねた折、Tさんの表情は沈んで見えた。
「家を建て直しても子供や孫が一緒に住んでくれるかどうか・・・・・・」
現地からの生中継で取材に答えて下さったTさんの声は、決して明るくはなかった。
だが話し合いの結果、再建なった新居には子供や孫も同居することになった。
最近は足腰も弱くなった高齢の母君も一緒だという。
晴れやかなTさんの笑顔だった。
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自宅再建が難しい住民のために、村は先月末、災害復興住宅を着工した。
村内4カ所に10棟18世帯分。11月末には完成の予定だ。
「どんな形であれ、住んでいた場所に戻れること。自宅でも復興住宅でもいい。
 ご近所がまた顔を合わせられる環境が戻ってくること。そこからしか
 “地域”は始まらないと思うんです」とTさんは口にした。
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堀之内周辺の田んぼには既に水が張られ、田植えも始まっていた。
あの地震から2度目の夏がそこまで来ている。そしてTさんたちにとっては、
仮設で暮らす最後の夏になる。

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【白馬村堀之内の水田にて/5月20日・伊東撮影】
 
 

05/26 謝罪よりも先に・・・

「母の背中で爆風を受け、一緒に土手の下まで転げ落ちました」
「二階建ての家が横にあった。おかげで熱線を浴びなかったんです」
ここまで話した後、男性はこう口にした
「でも母や叔父・叔母から聞いた話なのかもしれません。
 だって1歳の記憶ですから。でも映像は鮮明に頭の中にあるんです・・・」
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藤森俊希さん(72)。広島生まれ。1歳の時に爆心地から2km余りの場所で
被爆した。母に背負われ病院に向かう途中の、土手の上だったという。
オバマ米大統領の広島訪問をどんな思いで見ているのか。それを聞きたくて
八ヶ岳山麓・茅野市の高原にある自宅を訪ねた。
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今回、大統領には「謝罪を求めない」という日本政府の姿勢について問うと、
「被爆者としては複雑ではあるが」と前置きしたうえで、
「謝罪よりも先に“核兵器のない世界をつくる”という約束を早く実現すること」
との明確な答えが返ってきた。
オバマさんが大統領になって間もない2009年、プラハで世界に向けて宣言した
あの言葉である。但しそこには「私が生きているうちは難しい」の一言が付される。
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「あの一言を取り払った(出来るだけ早い)実現を」というのが藤森さんの思いだ。
そのメッセージを今回改めて「広島から」発信してほしい、と願う。
大統領が広島で「何を・どうするか」を見届けたいと藤森さんは言う。
大統領の広島訪問の意義を問うシンポジウムが、あす夕刻から広島市内で開かれる。
そのシンポに出席するため、藤森さんはあす朝に茅野を発つ予定だ。

05/03 どこ吹く風ではなく

 いつだったか、学生時代に使った六法全書を探したが見つからず、
あることに気付いて探すのをやめた。
法学部なるところを卒業して30年近く。
その間にどれほどの法律が改正され、新たな法律が作られたことか。
「新しい条文が載っていない六法は、持っていても意味がない」
と当時、教授の一人に言われたのを思い出したからだ。
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 しかし、六法全書の中で一番最初に載っている日本国憲法は、
私が六法を持ち歩いていた時代と一言一句変わっていない。
あの当時から憲法改正をめぐる論議はあり、今もなお続いている。
 きょうの「Face」でお伝えする県民世論調査の結果では、
憲法改正の必要性について「わからない・何とも言えない」の回答が
概ね4人に1人という数字が出た。
年齢層が若くなるにつれてその割合が高いという傾向も見える。
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 何かと議論の的になりがちな9条ばかりでなく、
他の条文も改めて読んでみると、なかなか興味深い。
内容に限らず、ああ良い文章だなあ、なんて思ったりもする。
今の議論を風の如く受け流す人は私の周りにも少なくないが、
“ちょっと憲法を読んでみる”のも悪くないのでは、と思う。
(ちなみに「読んだことがある」人は48.7%)
長野市での憲法集会を取材したK記者のニュース原稿。
その結びのひと言が妙に心に残った。
『来年、施行70年を迎える日本国憲法をどう考えるか。
 きょうは、一人一人が見つめなおす日でもあります』