伊東 秀一

08/16 絵描きの眠る丘

西日が差す午後5時すぎ。
コンクリート造りの館内は思ったほど冷んやりしておらず、
昼間の暑気がほんのりと残っていた。
画学生たちの絵と暫し向き合ってから館の表に出、
位牌に手を合わせ、蝋燭に灯をともす。

お盆と重なった日曜の夕刻、上田市郊外の丘に立つ無言館を訪ねた。
戦争で逝った画学生の遺作を展示する美術館。
毎年お盆の3日間だけ、画学生の名を刻んだ絵筆を供えて供養する
「千本の絵筆の祈り」が行われている。

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【十字架型の無言館を無数の灯りが囲む/14日午後7時すぎ】

徐々に暮れていく時間。訪れる人は決して多くはないが、
屋外に置かれた供養台には降るような蝉しぐれが注ぎ、
そこだけが不思議と厳粛な空間だった。
近くに立つ分館内を見て回った後に再び本館を訪れると、
数百本はあるだろうか、蝋燭の灯りが無言館を照らし出していた。

「反戦でもない非戦でもない。ただ絵を愛し、ひたすら絵と向き合い
 逝った若者たちが、生きたという証がこの絵なんです」
初夏にお目にかかった館主・窪島誠一郎さんの言葉を思い出す。

若い絵描きたちが眠るその場所は、上田市郊外の山王山の頂にある。
「千本の絵筆の祈り」は16日(今夜)まで。 

08/09 車列の風景

2か月ほど前のことになる。
車列が近くをお通りになるからと聞き、家人と路肩に立った。
住宅街の一郭の僅かなスペースには、近所の人たちだろうか、
既に数十人が集まり、小旗を手にその時を待っていた。
              ✤
「間もなくお見えになります。前に出ないよう気を付けて下さい」
警備の職員が声を掛けてほどなく、先導の白バイと警察車両が
整然と目の前を通過する。少し車間を置いて現れた黒塗りの後部席に
天皇陛下と皇后陛下のお姿が見えた。
一斉に日の丸が振られ、周りから歓声があがる。
とその時、お二人が運転席に向かって何かを囁いたように見えた。
次の瞬間、徐行していた車が一瞬だが停まった。
窓から身を乗り出されるようにした両陛下の笑顔の先には、
近くの介護施設の人たちだろうか、車椅子のお年寄り数人の姿があった。
これほど細やかにお心配りをされるのだと、この時あらためて思った。
              ✤
生前退位をめぐる昨日の会見を聞き、その全文を紙面で読み返す度に、
「全身全霊をもって」という陛下のお言葉と、あの日のお姿が重なる。
遠ざかる車列に向かって、拝むように手を合わせていた車椅子の老婆の背中が、
今も記憶に残っている。
             

08/05 “海なし”というなかれ

信州=長野県のスポーツといえばウィンタースポーツ、
という従来の“定番”を覆したところが、ある意味嬉しい。
シンクロ、サーフィン、カヌー、バドミントン、陸上・・・・・・。
どれも今回のリオ五輪に出場する長野県出身、
あるいは在住の選手がいる種目である。

1998年の長野冬季五輪の舞台となった信州から、
今、真夏の大会種目に挑むアスリートがいる。
これって、凄い“進化”なのかもしれない。

眠れぬ夜がやってくるのは覚悟のうえ。
寝ぼけ眼(まなこ)で競技の余韻に浸れる昼間がある
というのも、これはこれで嬉しい。

リオ五輪は日本時間のあす開幕。
がんばれNIPPON!
がんばれSHINSHU!である。