伊東 秀一

10/28 初秋×晩秋

長野市街地の、しかも中心部に近い路地裏で
鮮やかな橙(だいだい)色の実が風に揺れていた。
同じ幹に巻きついていたのは朝顔と思しき紫の花びら。

前者は晩秋、後者は夏から初秋にかけての名残である。
ちょっと意外な二色の組み合わせ。いかがでしょう。

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【週初め、長野市内の珈琲店の軒先にて】

10/27 戸惑いの現場で

「ええ、こんな場所でですか」
「やだ、私なんか毎日買い物に来てるのに」
警察の規制線の外側で私たちが事件現場を囲んでいる時、
尋ねてくる通行人に状況を説明すると、その顔色が一様に変わる。
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長野市の大型店前で起きた切り付け事件(殺人未遂容疑)は、
酒に酔って大声をあげていたのを注意されたことが犯行の動機だったという。
目撃者に聞くと、首を刃物で切られ出血しながら倒れこむ被害者を、
容疑者が執拗に追いかけ、その背に覆いかぶさっていたという。
面識のない同士だというが、酔った勢いでいきなり刃物を向ける、
そんなことが本当に出来るものなのかどうか。
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子供も大人も普通に行き来する場の一郭でその「まさか」が
実際に起きてしまったということ。
同じ街に住む一市民として、正直戸惑いを隠せずにいる。

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【鑑識作業中の警察官/正午前・長野市鶴賀権堂町】

10/26 アンタッチャブル

迷ったなら思い切って選べ、とか
分からなければ試してみよ、などもってのほか。
「分からなければ触れるべからず、採るべからず」
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今が旬のキノコの話しである。
毒キノコによる中毒が県内でも散発的に続く。
どんなベテランでも少しでも怪しいと思ったら
決して手を出さないのが鉄則だという。
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写真は「秀一のシューイチ」でスタジオに持ち込んだキノコ2種。
スタジオで並べてみれば違いが見え易いが、薄暗い藪の中ならば、
一緒に採ってしまう恐れは充分にあるという。

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写真は、左の大きな方が毒キノコ、右は食べられるキノコ。
私自身も子供の頃、父や祖父母と一緒に自宅界隈の山林で
ずいぶんと採った記憶がある。
大人が採ってくれたものなら間違いないという安心感のもと、
何の不安もなく口にしていたあの頃、ある意味幸福ではあった。
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いわゆる“一般的言い伝え”なるものにも用心すべきことを知った。
「柄=軸の部分が縦に裂けるものは食べられる」
「茄子と一緒に煮込めばキノコ毒は消える」
どちらもどこかで聞いたような説だが、これはどちらも【✕】。
実際にスタジオで実験したら、毒キノコの軸も実に綺麗に裂けたのである。
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駄目押しで最後にもう一回書いておきたい。
「少しでも迷ったら触れるべからず・採るべからず」
まさにアンタッチャブル、である。

10/07 ヒトの気配 クマの気配

南のスギ林には、中身を食べ尽くされたクリのイガが散乱し、
北の渓流沿いには青みが残るドングリが幾つも落ちていた。
前者は長野県の南端、阿南町で見た光景。
後者は最北端の信濃町で出会った景色である。
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クマ被害の取材で今週、県内を南から北へ縦断した。
不思議なことにクマの出没件数は4年ごとにピークを
繰り返すサイクルがある。
今年はそのピークの年にはあたっていないのだが、
それでもここ最近の出没はいつになく多い気がする。
            
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【クマの好物・ドングリ/信濃町富ヶ原で】

2つの現場を訪ねて気付いたのが「音」という共通点である。
どちらも渓流の近くで、水音が高く聞こえていた。
この水音が、近付く人間の気配を消してしまい、
結果としてクマと人間が接近遭遇する事態を招く。
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専門家が教えてくれた「クマに出会いやすい条件」が以下の3つだ。
 1:川や渓流の近く
 2:雨の降る日
 3:風の強い日
いずれも人間の気配を知らせる物音がかき消されてしまう。
3つめの風に関しては「人間の臭い」も吹き消してしまうという。
だから、ヒトが接近してもクマが気付かない。
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「しっかり音を立てて(山に)入って下さいね」
取材の最後に、専門家に念を押された。
この仕事をしていると“気配を消す”のが上手い仲間が何人かいるが、
山や森では気配を大いに発した方がいいらしい。