伊東 秀一

01/06 林檎が走る鉄路

「長野県、特に北の方は林檎の文化圏だと思うんです」
カメラを前にしたインタビューで、芸術家はそう話した。
ああ、うまい表現だなあと感じ入った。
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きのうから、しなの鉄道(軽井沢~妙高高原間)を走り始めた
3両編成の電車。その車体に描かれたのは「りんごの壁画」だ。
その作者である田窪恭治さんにお話を伺う機会を得た。

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【電車の側面に描かれた“りんごの壁画”。田窪恭治さん作】

千葉県在住の田窪さんは、かつてフランス・ノルマンディーで
古い礼拝堂の内壁に“りんごの壁画”を描きあげた経験を持つ。
これが、“りんごの礼拝堂”として一躍話題となり、
建物の復活につながったという。
「フランスと日本の“林檎つながり”でこの仕事を得たのも
 何か運命のように思います」
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地元の林檎をアピールする飯綱町と、しなの鉄道の共同企画。
町内の鉄道駅には、既に田窪さんの描いた林檎の壁画がある。
沿線を歩くとき、あるいは電車に乗る機会がああったなら、
その車体に注目して頂きたい。鮮やかな林檎の樹に出会えるかも。

01/04 読む人

この年末年始、去年の取材ノートを整理していて
あらためて思ったこと。
「読む」というのは、難しいことなのだなと。
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日々私たちが生業にしている、読むという仕事。
ニュース原稿であったり、ナレーションの原稿、
時には番組やステージの進行台本であったり。
そこにある言葉を、正確に、聞き易く、分かりやすく。
これは基本中の基本なのであるが。
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長年ニュースの仕事に携わっていると、それ以上に
「読む」ことの意味が重くなってくる気がする。
いま目の前で起きている出来事を基軸、あるいは基準にして
「先を読む」ことも、時には求められるということ。
その根っこは「なぜそれが起きた」という疑問にも行き着く。
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きょう、新年最初の取材。物事の根っこがきちんと読めるか、
さらにその先を読む力が私にあるかどうかは別にして、
今年も「読む人」であり続けたい、と思った仕事始め。

12/31 暮れゆく

この年の瀬は、アスリートの方々とご一緒する機会に恵まれました。
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師走の半ば、東京での単独インタビューに応じてくれたのは
バドミントン・リオ五輪銅メダリストの奥原希望選手(大町市出身)。
「牛タンが大好きで、休日は甘いものとか食べにいってます」
と、競技中継では見せたことのない笑顔には、
21歳の普通の女の子の素顔を見た思いがしました。
「コートに立つと大きく見えますよね」
との私の質問には、
「態度がでかいからだとよく言われます、キャハハ!」
と屈託のない笑いで切り返され、
オジサンはますますファンになってしまいました。
痛めた肩が早く回復しますよう祈っています。

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【奥原選手の今年のひとこと。もちろん手書き】

29日の「Face」年末スペシャルにゲストとして来て下さったのは、
同じくリオ五輪銅メダリスト、シンクロの箱山愛香選手(長野市出身)。
マーメイドJAPANの中では唯一人、仕事を持ちながらシンクロを続けてきた
頑張り屋さんです。
リオがおわってから休養を宣言したあとも、後進の指導からは離れたくないとキッパリ。
「やっぱりシンクロは好きなんですね」
との質問に、向日葵のような満面の笑顔で
「大好きです。シンクロをやってきたから今の自分があると思うんです」
1月からスタートする市民向けのシンクロ教室についても、
“ちゃっかり”問い合わせ先までテレビでPRしてくれました。

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【こちらは箱山選手の直筆。可愛い文字!】

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年は変わっても、変わることなく続いていくもの。
ここを節目に新たな世界へと踏み出す人。
2016年という年が、それぞれの来年にとってよきステップでありますように。
どうか、良いお年を。
               (2016年12月31日午後5時)
              

12/28 縦横無尽に

さて、今年も私たちのニュースの締め括り
「Face」年末スペシャルの放送が近付いています。
下の写真はけさの新聞番組欄(讀賣新聞)から。

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文字数120。通常の紙面の4倍のスペースをもらって、
3時間10分の生放送の内容をご紹介していますが、
実はこの紙面に、ある「仕掛け」が隠されています。
今回の番組を取り仕切るSディレクター“苦心”のこだわりを、
さて、皆さんに気付いて頂けるでしょうか?

ヒントをひとつ。テレビ欄はご覧のように横書き表記ですが、
その他の記事は縦書きが基本。本来の日本語もそうですよね。
ちょっと見方(読み方?)を変えてもらえれば、
私たちの番組からのメッセージを読み取って頂けると思います。
どうですか、もう見つけました?
       (ただいま午前11時=放送開始まで約5時間)

12/10 遺言を伝える人

こんな不思議な巡り合わせがあるものだろうか。
頂いた名刺に書かれた「原田」という姓に、ご親戚ですか、と
冗談半分に挨拶を返すと「孫なんです、実は」との答えが返ってきた。
それが冗談ではないとわかった時、思わず私は鳥肌が立った。
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彼女の名は原田雅代さん。長野市出身。東京のプロダクションで
ミキサーと呼ばれる音声技術を担当されている。
ミキサーとは、収録されたインタビューやナレーション、現場音、
BGMなど複数の音声バランスを調整する仕事。
その雅代さんが、今回私たちが制作する「NNNドキュメント」の主人公、
元ゼロ戦パイロット・原田要さん(享年99)のお孫さんだったのだ。
祖父を取り上げた番組の整音・調音を、孫が担当するという。
なんというご縁、巡りあわせか。
               
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【番組を整音中の原田雅代さん。画面内は祖父の要さん(今年5月逝去)】

「家では口数の少ないおじいちゃんでした」「でも講演は饒舌だったんですね」
と孫の雅代さんは言った。
VTRの中で戦場体験を語る祖父を見ながら、何度も涙を流していたと、
同じミキサー職の先輩が教えて下さった。
亡き祖父と孫の“合作”と呼んだら、失礼にあたるだろうか。
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75年前、太平洋戦争開戦の発端となったハワイ真珠湾へ出撃した
ゼロ戦搭乗員・原田要さんが語り遺した言葉の数々。
戦後、長野市内に幼稚園を開園し、多くの子どもたちを見守り育てた。
そこにどんな思いがあったのか。
開戦75年の冬に是非ご覧いただきたい一本。

■「NNNドキュメント‘16」
  ゼロ戦乗りの遺言~真珠湾出撃 原田要の肖像~

■12月11日(日)深夜2:05~(30分)

■テレビ信州ほか日本テレビ系列全国ネット