鈴木 恵理香

11/11 あの日

“あの日”
取材をしていると皆さんが口々にそう言う。
2019年10月12日・13日は、あの日と呼ばれる日になってしまった。

台風19号が発生したのを知ったのは先輩との会話でだった。
「遠くで台風が発生したんだって」。
ちょうど週末に自分が担当するイベントを控えていたため、
天気予報をこまめにチェックしていたが、正直、当初はあまり警戒していなかった。
しかし徐々に「史上最強」とささやかれるようになり、事の大きさを知ることになる。

個人的な話になるが、台風には非常に恐怖を感じている。
毎年いくつもの台風が上陸し猛威をふるう九州・佐賀県で過ごしていたからだ。
九州では私たちメディアも、台風発生となれば直撃予想の何日も前から態勢を組み、
備えをされている漁師の方に取材をするなど、万全の状態で臨む。
たとえ、“空振り”であっても。

信州に引っ越してきてからも同じ心構えでいたのだが、
「大げさだなあ。長野県は山が守ってくれるから台風は来ないんだよ」。
何度もそのように言われた。こういった認識にはものすごく違和感を
感じていたし、そんなことはないのでは?と懸念していた。

「今回の台風は山は壁にならない」。
そう気象予報士からの話があったが、私も信州に住んで1年半余り。
どこかで信州には実際には来ないのではないかとの思いがあった。
あんなに準備していたのに。
いつの間にか、九州に住んでいたころのあの警戒心が薄れてしまっていた。

10月12日。
大雨特別警報が県内に初めて出され、まもなく特別番組を放送。
私は外から中継でお伝えしたが、もう長野県では感じたことのない激しい雨風だった。
「命を守る行動をとってください」。
強められるだけ語気を強めて、マイクに思いを込めた。

でも、振り返ると、その時にもっと違う呼びかけができたのではないか。
もっと危機感が伝わる表現ができていたら…。
少しでも被害を小さくできたのかもしれない。今となっては、そう考えてしまう。

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あの日から、あすで1か月。
文字に起こせば起こすほど、様々な感情が湧き起こってきます。
このひと月、ほぼ毎日被災地域の取材を続けてきた中でめぐらせた思いは、
のちほどしたためたいと思います。
ローカル局として、何ができたのだろうか?
そしてこれから、何ができるのだろうか?
答えはわかりませんが、スタッフ一同、日々考えています。

ただ、県民の皆さんに寄り添い続けたい。
その思いはいつだって一つです。