伊東 秀一

12/18 大日向、年の瀬


【佐久穂町大日向四区から南の山並みを望む】

天気快晴。気温8度。ほぼ無風。
ひと月半ぶりに訪ねた佐久穂町大日向(おおひなた)の集落は、
穏やかな冬の日差しの中にあった。
ただし、発災当初と変わらない痛々しい風景も各所に見られる。


【大日向四区の土石流の痕。1か月半前のままだった】

川と並行して延びる生活道路はおおむね復旧したが、
山から襲った土石流や鉄砲水の痕跡はそのまま。
中には、土砂で倒壊した住宅が放置されている所もある。
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「大日向全体では2~3人が地元を離れるらしい。
 私の知っている家でも2軒はここを出ると聞きました」
地元区長をつとめる男性は、川沿いの家並みを見やりながら話す。
30年間地域で暮らしたその口調は、寂しそうだった。

山沿いの斜面を歩くと、整然と石垣が積まれた棚田が広がる。
十数段にもおよぶ大半は、長年耕作されていない休耕田だ。
一面を覆い尽くしたススキの穂が風に揺れていた。
近くに立つ石碑には「昭和42年」の文字が刻まれ、
今は亡き3代前の県知事の名が揮毫されている。
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山間を流れる川沿いに、わずかな農地を求めて戦後に入植した開拓農村。
工夫と苦労を積み重ねた棚田の石垣が、その歴史を物語る。
「これまでこんな水害は一度もなかったんです。あの穏やかな川が、
 嘘みたいな話ですわなあ」(大日向三区の住民) 
親戚のもとや町営住宅で年の瀬を迎える大日向の人たちが
我が家に戻れるのは、早くても年明け1月の後半になるという。