伊東 秀一

03/12 歳月

「いつもの年より70~80センチは少ないかあ。ずいぶん助かってるよ」
大人の胸の高さほどある雪の壁を見ながら、88歳の男性が教えてくれた。


【積雪は約1m。栄村青倉の集落/8日午前】

東日本大震災の翌未明に長野・新潟県境を襲った地震は
最大震度6強。最も多くの被害を出したのが栄村だった。
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取材がてら久し振りに訪ねた老夫婦は、今年も元気でおられた。
夫94歳、妻95歳。奥さんは4月になれば96になるという。
雪が深くなる1月から4月までは、車で10分ほどの距離に住む
娘夫婦の家に身を寄せる。。数年前から介護サービスにも通っている。
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「心配事は、何もないなあ。娘がよくしてくれるし」
8年前の地震で被災した青倉集落の家は築およそ100年。
家財道具は散乱したが、その後も修理して住み続けている。
            

【青倉を取材中のスタッフ。例年より雪はかなり少ない】

「お兄さん(伊東のこと)、前もお会いしたっけ?」
「はい、一昨年もその前の年もお邪魔しました」
「あらまあ、最近みんな忘れちゃうのさ、アハハ」
屈託のない笑いと会話は、以前と少しも変わらない。
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「青倉のほうも見てきました。今年は雪、だいぶ少ないですね」
「そうかい、早く帰りてえなあ」
おじいちゃんが、ふと遠くを見るような目をする。
住み慣れた家に2人が戻るまであと少し。
地震から8度目の春が、すぐそこまで来ている。