伊東 秀一

03/25 景色とランナー

 さきほど残念なニュースが入ってきた。
4月に予定されていた長野マラソンが【中止】と決まった。
夏の東京オリンピック【延期】が決まった翌日というタイミング。
やむを得ない判断と感じつつも、残念な感はぬぐえない。


【重機が動き続ける千曲川河川敷/長野市松代町岩野】


【流木が積まれた千曲川右岸/いずれもきょう午後撮影】

「今年の長野マラソンは被災地を見ながら走るんですよ」
ほぼ毎年完走している天龍村出身のランナーHさんの言葉だ。
彼女に言われてコース図を見てみれば、確かにそうである。
全行程42.195kmのうち、26km付近からは
千曲川の堤防道路を走るコースになる。
いくつかの橋を渡り、河川敷を左に右にと目線を変えながら、
時に川が視界から消えることもあるが、
おおむね39kmあたりまでは千曲川とほぼ平行している。
            ✤
「県外から来るランナーさんたちには見て欲しい風景ですね」
彼女がぽつりと口にした言葉が記憶に残っている。

 ボランティア、募金、物資の提供。
被災地支援のかたちは様々あるが、
現地を見て、触れて、知ってもらい、誰かに語り伝える。
それも、支援のひとつの姿ではないかと私は思う。
その意味でも、全国1万人が集う大会の中止は残念だ。
            ✤
 きょうの千曲川沿いは快晴。風はやや強かったが、
遥か西には残雪の北アルプスが真っ白に光っていた。
砂に覆われた河川敷では、今も休みなく重機が動いている
 

             

03/23 「かみ」って何だろ?

 前日との気温差が10℃近い日もある弥生3月。
このまま順調に春本番、とは思えないこの頃です。


【水溜まりと夕空/長野市・若里公園で】

 前回ちょっとふれた「かみゆき=上雪」という言葉の話。
長野県外から来た方は「なに、それ?」と思われるのでは。
これ、信州独特の呼び方なのです。私なんぞは子供の頃から
父母も祖父母も近所のおじちゃんおばちゃんも口にするのを
日常的に耳にしていたものです。
           ✤
 長野県中部から南部にかけて、晩冬から春にかけて降る
湿り雪のことを「かみゆき」と呼ぶのですが、
この「かみ」の語源が諸説あり面白いのです。
           ✤
・上方(かみがた=関西)に近い方に降るからという説。
・春の雪をもたらす南岸低気圧が、関東に近い=上り方面に
 位置するからという説。

 さらに「かみ=上」が意味するものを紐解いていくと、
・かみ=江戸時代に京都とその周辺を指した呼び名で
  広い意味では大坂(当時の表記)を含む呼称とのこと。
・そもそも皇居のある方角を「かみ」と呼んだという説。
 ただし京都を「かみ」とは呼んだが、皇居移転後の東京を
「かみ」とは呼ばないのだとか。
           ✤
 言葉の歴史の奥深さと難しさを改めて感じます。
調べ始めたのですが、きりがなくなってきました、はい。

※参考文献:「大辞泉」小学館 
      「大辞林」三省堂
      「広辞苑」「岩波国語辞典」ともに岩波書店
                  ほか国語辞典各種
      「長野県百科事典」(信濃毎日新聞社)
      

 

            

03/16 「かみゆき」かと思いきや

 少し遅めの出勤だった今朝。きのうより寒いからと、
厚めのコートを羽織って窓の外を見た途端!


【長野市中央通りは大粒の雪/午前10時前】

 牡丹雪とおぼしき塊がベールのように降り注ぐ。
表に出てみれば、コートも手袋も足元もじっとり濡れ、
春特有の湿り雪である。
「ああ、きっと上雪(かみゆき)かな」と思いつつ、
全身真っ白になりながら仕事場に着く。
気象予報士の宮本さんに聞けば
「いえ、南の方は降ってないんですよ」
「冬型なので北の一部だけの雪」とのこと。
            ✤
 例年であれば3月後半から4月にかけての湿り雪は、
中信~南信地方にどっと降ることが多く、信州では、
とりわけ北信地域では「かみゆき」と昔から呼ぶ。
私は、これが来たかと勘違いしてしまったのである。
            ✤
 暖冬も終わるかと思う頃になって、冬型がやってくる。
やはりこの冬はちょっと奇妙な雲行きのような気がするが。
            ✤
ところで、私も気になっている「かみゆき」の語源については
後日の小欄で紹介予定。ではでは。

03/11 ピアノと空気

「ここのホールは音の残響がちょうどいいんです。
 2.0くらいなのかな、たぶん」

ピアニストが言うこの数字が2.0秒という時間を表すと知ったのは、
勉強不足の私がその場でピアニスト本人に問い返したからだ。
加えてその時に教わったのは、日本の演奏ホールの空調基準が
とても厳しいのだということ。

音楽ホールは、ともすれば巨大な密閉空間と思いがちだが、
実はしっかりと空気交換が行われているのだという。
国内のとあるホールで演奏した外国人ピアニストが
ステージ上の微かな空気の流れを感じ取り、
空調を止めろ!と語気を荒げたというエピソードも教わった。
単にそのピアニスト氏が神経質だった、という話ではないだろう。
              ✤
今月末に上田市で予定されていたピアノとチェロとオーケストラの共演が、
残念ながら中止と決まった。理由は一連のコロナ対策である。
関西に端を発した「ライブハウス」感染と、とかく一括りで考えがちだが、
その空間構造や環境には大きな違いがある。
音楽関係の方々には厳しい「連鎖」が続いているが、
一音楽ファンの目線で見ても、どこかで止めたい連鎖である。