年度末、溜まっていた休みを使って大阪を訪ねた。
前日にソメイヨシノの開花発表があったせいか、
淀屋橋、梅田、難波、通天閣、何処も圧倒的な人出だった。
そんな中、近鉄電車に乗り換えて郊外の住宅街を目指した。

眼を射るように鮮やかな紅色のキワタが咲く東大阪市小阪の路地。
敬愛する故・司馬遼太郎さんの記念館を兼ねた自宅がある。
地下から天井まで高さ11m、壁三面を埋めた2万冊の本棚を見ると、
ああ、作家の頭の中はこんなだったのか、とも思う。

小さな森のような庭からは、生前のままだという
司馬さんの書斎を窓越しに望むことができ、
窓外には菜の花と紫のツツジが花を開いていた。
この窓辺から世界を、日本を、歴史を俯瞰し続けた
ひとりの巨人がいたことを思いながら、私自身、
言葉を生業とする人間として初心に帰る旅でもあった。
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きょう3月31日、ひとつの区切りとなる定年退職の辞令を受けた。
あすからは再雇用社員。その形にこだわることなく、
言葉と社会に初心で向き合えたら、と思っている。









