伊東 秀一

06/04 連鎖を止める

 川崎市の小学生殺傷事件が、自分の息子を殺す引き金になった・・・。
自宅で引きこもっていた息子を殺害した元官僚が、
こんな趣旨の供述をしたことが報道された。
 同様の事件を息子が起こす前に・・・と考えたのだという。
これを親心と呼んでいいのかどうか、私にはわからない。
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 佐久市で、胎盤がついたままの乳児が遺棄されていた事件で、
母親とみられる34歳の女が逮捕された。
 「ゆうがたGet!」できょうから始まる新解説コーナー
『秀一のNEWS一本勝負』の初回は、これを取り上げる。
どんな事情があったにせよ小さな命を置き去りにすることは
許されることではない。
 ただ、この事件を別の角度=母側の目線で見てみると、
違ったものが見えてくる気がする。
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 仮に、産んだけれど経済的に育てられない場合、
思いがけない妊娠(望まない妊娠)をしてしまった場合、
誰にも相談できず独りで抱え込む女性が少なからず
いるのではないかと考える。
 こうした女性たちに「まず相談を」という狙いから
この春、県が開設した相談窓口があることをご存じだろうか。
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【にんしんSOSながの】で検索を。
【電話:0120-68-1192】

上田市にある乳児院が実際の窓口になっていて、
電話とメールでの相談を24時間・年中無休で受けてくれる。
対応するのは福祉専門の女性スタッフ。
相談は匿名で可能、秘密は守られる。
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 逮捕された無職の女がこれに合致する境遇だったかどうかは
今後の捜査を待たなければならない。だが少なくとも、上記の
「川崎⇒元官僚」事件のような負の連鎖は止めなくてはならない。
 大事なのは「独りで抱え込まない」こと、そして
「相談できる場がある」ことを、まず知ってほしい。
            
 

  
           

05/30 季節到来

久々の東京取材。現職国会議員のインタビューでした。
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「野党の存在意義をきちんと示さないと。
 ただ与党に反対をぶちあげるだけでは駄目。
 対案を示して議論の席に双方が着かないと」
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私と年齢の近い野党政治家が話してくれた言葉です。


【参議院議員会館から。左奥が国会、右は衆院会館】

議会や政治の場は「議論の場」であるはずなのに、
その基本がさっぱり出来ていない、と彼は言います。
有権者もそう思っているのに、当の政治家諸氏は
それをどう感じておられるのか。
            ✤
選挙の季節が近づいています。参院選だけになるのか、
衆院選とのダブルになるのかはまだ分かりません。
ただ、このところ政治と言えば「失言」のニュースしか
印象にないのが如何せん悲しいところ。
ちゃんと議論らしい議論を見たい気がするのですが。
見られますかね?この夏は。

 

04/09 とりあえず・・・祝!

久々に訪ねたキャンパスは新入生でごったがえしていた。
今年もまた信州大学での私の講義が始まった。
「テレビのメディアリテラシー」と銘打った
全学部1年生対象の選択教養科目である。


【新入生で混み合う松本キャンパス/8日】

今年の受講希望者は38人。全員が揃った教室で
毎年、学生たちにある質問をする。
「自宅通学生を除いて、自室にテレビのない人は?」
挙手したのは3割強から4割ほど。少ない方である。
多い年は半数から6割以上という年もある。
          ✤
テレビを見ない(持たない)若者にテレビ論を論じる、
そのジレンマも正直なくはない。が、それも時代。
生の時代を見つめ、受け止めるのも我々の仕事でもある。
          ✤
情報の送り手である私たち(あるいは私自身)の目線で、
18歳の若者たちに何を伝えることができるか。
とりあえず、入学おめでとう。
一緒に学問、始めるよ!


【大学北門近くの桜並木はまだ咲き始め】

03/29 陽だまり

道端で引っ越し荷物を積み込むトラックを何台も見かけるこの頃。
局舎に隣接する長野市・若里公園では、卒業証書と思しき紙筒を
大事に抱えながら写真撮影する大学生の姿を見かけました。
春めく日差しの中、大勢の人が動く時季になったのだなあと実感します。
               ✤
ここからは暫し私事でご容赦下さい。
先日、息子の高校の卒業式に出席してきました。
県外のミッションスクールに進み3年間の寮生活を了える日、
校長先生がこんな言葉を贈って下さいました。

「3年間お預かりした生徒たちを、社会へお返しします」

この言葉を聞いた時、ああ、子供たちは“守られて”来たのだな、と思いました。
親元を離れた世界でそれなりに揉まれたこともあったはず。
それでもこの日を迎えられたのは、陰に日向に見守ってくれた
多くの目があったからなのだと、あらためて感じます。


【3月、卒業礼拝終了後のチャペルにて】

新しい年度の始まりまであと3日。
穏やかな日差しの中から風吹く社会へと踏み出す若者も少なくないはず。
あの日、先生の一人がわが子たちへ贈ってくれた言葉を、親である私自身への戒めとして、
4月を待とうと思います。

  「荒れ野に咲く花のように」

こんなふうに生きてみたいです。

03/13 灯り①

地震が村を襲ったのは、午前4時前だった。
真っ暗闇の中で、住民の方たちは何を頼りに朝を待ったのだろう。


【栄村・森宮野原駅前/12日午後7時前】

子供たちがキャンドルを並べ始めて間もなく、
高さ8mの雪の壁面に「3.12 栄村」の光の文字が
ゆらゆらと浮かび上がった。
会場のあちらこちらから静かな歓声と溜息があがった。
           ✤
県北部地震から8年になる栄村で行われた「復興灯明祭」を訪ねた。
小雨の降りしきる中、集まった人たちは傘や雨合羽姿で、
夕闇に浮かび上がる蝋燭の灯りを暫し見つめていた。
           ✤
この8年で、村の人口は約2割減少し、
一方で65歳以上の人口比:高齢化率は5割を超えた。
地震以降、その進み具合は他の自治体よりも速いという。
「村を元通りにすることが難しいのは分かっている。
 でもね、一軒一軒の灯りは守りたいんだよね」
キャンドルに灯を点していた男性スタッフの言葉が胸に残った。