伊東 秀一

11/12 記者たちの1か月

 「他人の生活に土足で踏み込んでるような気がします」
 「声を掛けるのが申し訳ないと思ってしまって」        
被災地を歩いてきた記者やアナウンサーが、
夜の報道デスクでぽつんと口にするのを何度か聞いた。


【水害取材で訪れた上田市下之郷からの夕暮れ】

一方で、カメラを向けると溢れるような思いのたけを
一気に話してくれる方もおられる。
 「申し訳ありません、大変な時に」
 「いや、取材してもらわなきゃ私らのしんどさは誰にも分からんもの」
先日訪ねた長野市北部の住宅地。足首まで泥が積もった玄関で、
70台の女性は目に貯めた涙を懸命にこらえておられた。
           ✤
私自身を含め、連日現地を歩いてきた取材者は
おそらく全員が日々迷いの連続だったはずである。
それでも伝えなければ埋もれてしまう事実や思いがある。
この1か月間、局の廊下には泥まみれのゴム長靴が並ぶ。
           ✤
鈴木恵理香、齋藤沙弥香、厚芝智行・・・・・・。
若い伝え手たちが仕事の中で、日常生活の中で
体験し、思い、考えた事どもを最近のブログに綴っている。
取材者たちのこの1か月、お時間がゆるせば是非読んでやって頂きたい。
 

10/14 濁流の前で

空が白みかける頃、堤防決壊現場まで数百mの地点に着く。
前方の道路が水没して通れないため、車をUターンさせ、
脇道に入った途端、目の前の水田が海面のようになっていた。
波のような水の先端は明らかにこちらに近付いてくる。
取材現場で、久々に「怖い」と感じた瞬間だった。


【長野市豊野町/13日午前11時頃】


【濁流が流れ込む住宅街/13日午前7時】


【水没した電柱を高架橋上から/長野市赤沼】

「どれくらい(人数)の方が家に残っておられるか、
 正直わかりません。相当おられると思います」
とは現場の消防官の言葉。
             ✤
やがて目の前で救助活動が始まった。
孤立住宅から住民を引き上げるヘリコプターは「大阪府警」、
負傷者を乗せて走り出す救急車には「新潟市消防局」の文字が。
巨大台風で地元にも被災地を抱えながら、他県の被災者も支える。
互いに支え合いながら、それぞれが出来ることをしなくては。
濁流を前にして思ったことである。

10/11 “壁”には頼れない

雨風ともに過去最大級という台風19号が信州に近付いている。
これまで台風が接近するたびに、信州長野県は巨大な“壁”に何度も守られてきた。
標高3000m級の北アルプスをはじめとする山々である。
きっと今度も・・・・・・。そんな期待を持つ向きもおられるだろうが。
              

【天気:曇り。まだ無風。午後3時半の長野市若里1丁目】

きょうの気象解説、笠原久司・気象予報士によると、
「西から接近する台風なら南西や西寄りの風をアルプスが遮ってくれる。
 ただし今回は台風が東側。南北に連なる山並に対して北からの風が吹き込む」かたちになる。
 つまり、今度の19号は今までのように“巨大な壁”の効果は期待してはならない、らしい。
              ✤
長野県に最も近付くのは「あすの夕方から」との予想(午後3時・気象庁)。
出来る備えは、出来るだけ早いうちに。

10/09 おかんとラグビー

先日、実家に顔を出した折、母が目を輝かせて言った。
「ラグビー見てるのよ。素敵だわね、あれ!」
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母は1935(昭和10)年の生まれ。この夏84歳になった。
父が入院生活に入る前は、父に付き合って野球やバレーボール中継を
母もよく観戦していたが、自ら進んで球技を観るタイプではない。
その母が、である。

「あのゲーム、面白いわね。すっごく応援してるの」
「終わった後、互いに抱き合ったりユニフォームを交換するでしょ。
 あれがいいのよ。気持ちのいいスポーツよね」

テレビ中継でラグビーの複雑なルールや反則形態を
丁寧に解説するようになったこともあるだろう。
しかし、あの競技がもつ「ノーサイド=試合が終われば勝ち負けなし」
の精神が見る者の心を打つのだろうと私は思っている。
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ちなみにきょうもテレビ信州はラグビーW杯中継の日である。
★午後3:50~「スコットランド対ロシア」

このため、「ゆうがたGet!」はお休み。
「news every.」も短縮版。私の出番はほんのちょっとである。
おかん、ラグビー見てるか?

10/07 夏の名残に

「9月一杯どすから、あと少しでんな」
橋の上からスマホのレンズを向けていたら、
通りがかった地元の古老らしき男性が教えてくれた。


【京都・鴨川べり四条大橋西詰から撮影】

先日、神戸への出張帰りに立ち寄った京都の街は、
まだ暑さの真っ只中ながら夏仕舞いの気配があった。
夏の風物である納涼床(のうりょうどこ/のうりょうゆか)。
京の人たちは親しみをこめて「ゆか」と呼ぶ。
夜は灯りが点され賑やかなのだろうが、無人のそれを昼間見ると
何だかさびしさが漂って見える。
            ✤
10月に入り、今はもう床は姿を消しているのだろう。
久々に夏の写真を整理していたら、ふと目に留まった1枚。
夏の名残におひとつ。