2021/10/14 ご城下の村

「この辺りは室町から江戸にかけてご城下だったんです。

 ちょうどあの辺りにね、お城があったそうで」

女性が指さす先には、まだブルーシートに覆われた堤防が見えた。

その数百メートル上流に、かつて長沼城という城が存在したという。

あの会話を交わした日から間もなく2年が経とうとしている。

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【修復中の千曲川堤防(決壊地点)/2019年12月撮影】

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長沼(ながぬま)と呼ばれる長野市北東部の一帯は

大町・穂保・津野・赤沼の4つの地区から成る。

昭和20年代までこの地にあった長沼村(当時)の呼称でもある。

田畑が広がる一帯はリンゴの名産地として知られるが、

ご城下だった頃は同時に松代藩(現・長野市松代町)と

越後(新潟)方面を結ぶ宿場町として栄えた歴史ももつ。

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「立派な蔵や大きなお屋敷が残ってるでしょう。

 もちろん昭和以降のものもありますが、中には宿場当時から

 現存してる建物だってあるはずなんです」

長沼の歴史を研究し続ける地元の女性は、日常生活と一緒に

歴史の一端が流されてしまったことを悔しそうに話した。

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【氾濫の水圧で倒された石仏/2019年12月・長野市穂保で】

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水害が流し去ったものは、目に見えるものばかりではない。

そんな当たり前のことが、お城の話を思い出すたびによみがえる。

あの日から、きのうで2年が過ぎた。

2021/10/09 窓明かり

各地に出されていた緊急事態宣言、蔓延防止重点措置が

全て解除されて1週間余り。

土曜日曜の観光地は県外ナンバーの車両が増えたと聞く。

日が落ちた頃、いくつかの宿泊施設を遠目で眺めてみると、

部屋の明かりはひとつも点いていない。

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【長野市・城山公園から見た夕暮れの長野市街地】

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ほんの何週間か前、その建物はほぼ全ての窓明かりが灯っていた。

新型コロナ感染者のいわゆる「宿泊療養施設」である。

県内の新規感染が158人と最多を記録したお盆明け前後、

煌々と灯る"満室"の明かりを見ながら気持ちが塞いだのを思い出す。

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県内のワクチン接種率(2回目)が70%に達したニュースを聞きつつ、

あの窓明かりが再び増える日が来ないことを願った。

2021/10/07 川と生きる~上流の町から

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去年の今頃はまだ通行止めだった国道が通れるようになっていた。

下を見下ろせば、崩れた護岸や流木、倒木が散乱し

川は形が変わるほど激しい流れに削られたことがわかる。

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千曲川上流に位置する南佐久郡佐久穂町をほぼ1年ぶりに訪ねた。

集落のある一帯では道路も護岸も復旧が終わり、

住民も元の平穏な生活を取り戻しつつあるように見える。

ただ、山沿いに一歩踏み入れば、手付かずの箇所が目につく。

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600人余りが暮らす大日向(おおひなた)は戦後の開拓集落。

穏やかな抜井川(ぬくいがわ)に沿って東西の山間に拡がっている。

その穏やかな流れが牙をむいたのが2年前のあの日だった。

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「この時季になると2年前を思い出しちゃうんです」

「また同じ災害が来たら、もうここには戻れないかな」(住民)

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この2年で何が変わり、何が変わっていないのか。

川とともにある大日向からの報告は、あすの「news every.」で。

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【通れるのは県境の十石峠まで。柵の向こうは群馬県上野村】

           

2021/10/05 予知能力

撮影したのは秋の彼岸。ちょっと前の写真だがご容赦願いたい。

長野市郊外にある実家の墓参りに行った時の1枚。

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墓石の一隅に見つけた小さな茶色の塊り。カマキリの卵である。

卵を産みつけた位置が高ければ、その冬は大雪予想。

低ければ積雪は少なめ、との言い伝えは亡き祖父から聞いた。

冬場の積雪量を予測し、埋もれない高さに卵を産むのだそうだ。

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ご先祖様への無礼を承知で測ったら、ちょうど私の腿の付け根あたり。

うーん、これって高いのか?低いのか?

比較対象するものがないので何とも言えないのだが、

ただこの一点については感心せざるをえない。

"予知能力"のある野生生物はスゴイ、ということ。

2021/09/30 夏炉冬扇

いつの写真?といぶかられそうですが、

つい先日の晩に、風呂上りに自宅で撮影したもの。

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火照った身体を冷ましているうちに、脛を刺されまして。

まだいたんです、蚊が! もうこの時季なら、と油断しました。

朝夕はめっきり涼しい一方で、日中の暑さはなかなかのもの。

そんな気候も影響しているんでしょうか。

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そういえばこれと同じ頃、縁側に咲き残った鉢植えのあたりを

大人の親指ほどもある蜂が羽音をたてて飛んでおりました。

夏の名残りが続く中、秋が短くなっている気がするのは

今年ばかりではないようです。

あれ、虫刺されの薬は? どこに置いたっけ💦

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