私自身、この現場からの中継は6年振り。
実行犯らの死刑が執行された2018年の夏以来だった。
30年の節目を機に地元町会が初めて設けた献花台が
児童公園の藤棚の下にあった。
8人が亡くなり、600人以上の重軽症者を出した松本サリン事件。
うち1人が犠牲になった生命保険会社の寮跡地に、公園はある。
「語り継がねば」という人もいれば、
「忘れたい。そっとしておいて欲しい」という人もいる。
取材に応えた町会関係者が地元の声を代弁して下さった。
ひと言では括れない30年の重さと長さが、
その言葉に籠められていたように思う。
節目の日から2日後の29日(土)、私たちは55分間の生番組で
事件の30年を振り返り、これからの課題を探った。
当時、第一発見者に疑いの目を向けたメディアの体質は
根っこの部分では変わっていないのでは、という問い。
オウムは名前を変えて今なお存続しているという事実。
微力ながら大学の教壇にも立つわが役目を俯瞰し、
現代の若者たちが30年前と同じ轍を踏まないよう、
カルトに近づかぬために何をどう伝えたらよいか。
歳月を超えて今なお続く「現在進行形」の問いである、
と私は思っている。
自転車で信号待ちをしていた夕刻のこと。
中年男性氏が跨る自転車が1台、隣りに並んだ。
信号が青に変わりほぼ同時に発車したのだが、
隣りの自転車はあれよあれよという間に加速し、
どんどん距離が開いていく。
「???」と思いつつ、よく見ると
サドルの下に小さなボックス状の装置が見える。
おお、これが世にいう電動アシスト自転車か!
懸命に追跡すること1分足らず。電動自転車氏は
遥か先の信号を颯爽と曲がり夕暮れの街へ消えていった。
いやー、こんなにもスムーズに走るものなのか?
✤
従来型100%人力式(まあ要は普通の自転車です)を
すっと乗り継いできた身にとっては結構な衝撃だった。
夕餉の時間にその話をしたら、社会人1年生の息子が
「あ、俺も通勤用に1台欲しいんだよね」
ブルータスよ、お前もか!やれやれ......。
影アナ席の私からは、何が起きたのか分からなかった。
「切れたって!」「何本?」「続き、どこから?」
スタッフやマネージャー氏が舞台袖を慌ただしく動き回る。
舞台上の演奏は、第二楽章を終えたところで止まっている。
ほどなくしてピアニストと指揮者が腕を組むようにして
バックヤードに戻ってきた。
「ブラボー、ブラボー!」
マエストロはピアニストを笑顔で称えている。
その会話から初めて、演奏中にピアノの弦が切れたことを知った。
ピアニストは辻井伸行さん。何度もご一緒している世界的奏者だ。
ハプニングが起きたのは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。
第2楽章を演奏し終えたところで辻井さんが立ち上がり、
客席に向かって肉声で、弦が切れたので待ってほしいと説明、
いったん舞台を退いたのだ。見事な機転だった。
客席もオーケストラも、ざわつくことなく穏やかな雰囲気で
調律師さんの張り替え作業を見守った。
15分にも満たなかっただろうか、張り替えが終わると同時に
客席からもオーケストラからも自然な拍手が沸き起こった。
再び登場した辻井さんは、残る第3楽章とアンコール曲を
圧倒的な熱量で弾ききった。
✤
写真は、私の影アナ席モニターから見えるホール内映像。
20分遅れでの後半再開を待つお客さんたちも、
何事もなかったように穏やかだった。
ともすれば張り詰めがちな突発事態の空気を、
さりげないひと言で和ませる辻井さん。
そのプロ意識の凄さを垣間見た思いがした。
✤
きれいな花には棘(とげ)だけでなく「毒」もあるんです。
TSB近くで道路わきで見つけた鮮やかなオレンジ色。
ナガミヒナゲシというケシ科の外来植物で、
樹液(汁)に直接触れると皮膚がかぶれる恐れが。
✤
症状には個人差があるものの、うっかり触れたり
摘んだりしない方がいいとのこと。
繁殖力の強さも今後の課題。綺麗な花にはご用心を。
鎮火した山火事の跡に初めて入って、驚いた。
斜面一帯が一面焼けているのではなく、
焦げた跡が点々とまだら模様に散っている。
ああ「火が飛ぶ」とはこういうことか、と。
現場は松本駅から南東へ4㎞の、松本市中山の山林。
山並を超える空気が乾燥しやすいこの時季、
松本の地形は、いわゆるフェーン現象が起きやすいという。
様々な要因が、山を2日間も燃え続けさせたらしい。
鎮火後の周辺では、何事もなかったように
田起こしの作業が続けられていた。
(写真=棚田の後方奥が火事のあった山林)