2021/03/15 豪雪の村から

長野市から高速と一般道を乗り継いで

北へ向かうことおよそ1時間半。

新潟県境が近付くにつれ、風景が白くなっていく。

下水内郡栄村は大人の背丈を超す雪の中にあった。

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「たしかに暖かくはなったが、まあ雪はこんなもんだな」

集落で出会った老人が笑いながら教えてくれる。

長野県北部地震から10年の節目。栄村を訪ねた。

この10年で村の人口は4分の3に減り、

65歳以上の高齢者の割合は人口の5割を超えた。

住民数が1ケタになった集落もあるという。

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「地震がなければ、こんなには減らなかっただろうに」

住民が漏らした言葉が重かった。

建て直され、改修された住宅地のすきまで

雪に埋もれた空き地や更地の多くが、

かつて家があった場所であることを忘れがちになる。

それは「復旧」であって、まだ「復興」ではない。

この意味の違いも、忘れてはならないと改めて思う。

2021/03/08 マエストロの涙

 アンコール演奏を終えた直後、2000人近い観客が

一斉に立ち上がって拍手する現場に立ち会ったとき、

モニター越しとはいえ、私も総身に鳥肌が立った。

              ◇

 先週末、佐渡裕さんが指揮するオーケストラ演奏会の

影アナ(場内アナウンス)という大役を仰せつかった。

"マエストロ=巨匠"の敬称を持つ佐渡さんとは初対面。

加えてソロ参加のピアニストは日本を代表する若手、反田恭平さん。

こちらは過去に何度もインタビューにお付き合い頂いた方である。

「お久しぶりです、元気でした?」

控室前の通路で目が合うと、彼の方から気さくに声をかけて下さる。

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 コロナ禍で、これまで客席入場率を50%に制限していたものを、

今回初めて100%にしての試み。私たち舞台裏のスタッフにも

正直かなりの緊張感があった。

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 舞台袖の影アナ席(写真)からは、客席が埋まっていく様子が

天井カメラのモニター映像で常に見えている。

開演5分前に座席がほぼ埋まった。こんな光景は実に久しぶりだ。

              ◇

「間もなく開演いたします・・・・・・」

このアナウンスを最後に、あとは舞台上から伝わる音と震動と熱気を

ひたすら感じ続けた2時間だった。

これを"役得"と言わずして何と言おうか。

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 終演後、バックヤードの通路でマエストロと暫し話す機会を得た。

「素晴らしかったです」

「うん、みんな(演奏者)良かったなあ」

やや疲れたように見えた佐渡さんに、満面の笑みが浮かんだ。

これから翌日の公演地である栃木県足利に向かうという。

「足利では子供たちの指導があるんです。何年も続いててね」

若い音楽家たちの話をするマエストロは、本当に嬉しそうだった。

              ◇

 帰路につくお客さんの会話が通路のドア越しに聞こえる。

「佐渡さん、涙ぐんでたね」「すっごく嬉しそうだったもの」

アンコールを終えたマエストロが、目に涙を浮かべながら

客席に向かって何度も挨拶されていたことを後になって知った。

              ◇

『今、世界がバラバラになってる中で誰かと時間を共有する、

 ひとつの空気の震動が喜びなんです。これは音楽の神様が

 与えてくれたもの。僕にはそれを届ける使命があるんです』

  【佐渡裕さん談 「news every.」インタビューより抜粋】

2021/02/04 こんな出前が!

 教室に響く園児の歓声を間近で聞いていたら、

なるほどリモートであっても映像の力は凄いな、

と感じ入った次第。

 コロナの影響で休館している北安曇郡小谷村の

イベント「チームラボ」が長野市のこども園に

「出前」をしたのです。

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 手描きの絵が、デジタル技術によって目の前の壁を泳ぎまわる姿は

まるで本物の水族館にいるよう。

              ✤

①原画を丹波島こども園(長野市)の園児たちが色付け

②小谷村に持ち帰り、読み取った魚を会場の空間に投影

③それを撮影した動画を園児に届ける という3段階。

              ✤

 手作業で「塗り絵」をした魚やカメやイカが本物のように

ユラユラと泳ぎ回る様は大人が見ても感激です。

 出前という工夫で子供たちの"いい顔"が見られた今回の取材。

今夜の「news every.」で、その顔と泳ぎを是非ご覧あれ。

 

2021/02/01 にわか教師の春

 朝の通勤途上、新聞紙ほどのサイズの案内板を手に

交差点に立つ女性を見かけた。そのボードには

「〇〇女子大学 入学試験会場、こちら」とあった。

少子化だけではない。コロナ禍の影響で今年度は

地方試験の会場を増やした大学も多いと聞く。

受験の季節である。

             ✤

 かくいう私も新年度から始まる大学講義の準備を始めている。

(いちおう週に1コマだけ受け持つ"にわか先生"なのだが)

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 写真は1年前、国立長野高専(長野市)で行った特別講義の私。

4月から松本キャンパスで受け持つことになる通常講義は

原則「対面授業とする」というのが大学側の方針なのだが、

さて、予定通りになるかどうか。

 自宅や自室でじっとリモート授業を重ねた学生も多いはず。

何の気兼ねもなく教室に通える、そんな春であって欲しいのだが。

             ✤

 教室という空間で「人と会い」「人と語る」ことでしか

始まらないものがある。先日放送したドキュメンタリーで

主人公の先生(故人)が話しておられた言葉がよみがえる。

 

2021/01/12 ハタチの背中

 式典もなく、かつての友人同士で集まる場もなく。

成人の日のきのう、長野市内は穏やかな印象だった。

道行く晴れ着姿も見かけることもない。

          ✤

 かくいう我が家は、今年二十歳になる息子とともに

昔お世話になった近所の老夫婦の墓前へ成人の報告に。

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 観音の石像が並ぶ杉木立の奥に老夫婦は眠っている。

足跡のない雪を踏み分けながら坂道を登る。

かつて数軒先のご近所にあった二人の家は、

ようやく歩きはじめた息子の遊び場でもあった。

実の祖父母以上にお世話になったといってもいい。

          ✤

 二十歳を迎える祝い、というよりも

この歳まで何とか育ったことに感謝する日。

そんな成人の日であっていいような気がする。

19年前、私の両掌にすっぽり収まっていた息子は、

いま両手で墓石の雪をかき分け線香を手向けていた。

手を合わせる背中がいつもより大きく見える。

あれ?その着てるコート、オレのなんだけど・・・・・・。

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